だいぶ昔の本だけど、22歳のときに単身スペインに渡り、ダンサーとして活躍された岡田まさみさんの「女ひとりスペインに生きる
とにかく、スペイン舞踊への愛がすごい。高校くらいまで特に何に熱中するわけでもなく普通の女の子をしていた(と書いてある)のに、スペイン舞踊に触れた途端ものすごい衝撃を覚え、その情熱は、まだフランコ独裁下にあったスペインに単身で渡るという決断を22歳の女の子に下させたのだ。
いや~情熱ってすごい。そこで彼女は上流階級のお嬢さんたちのお遊びダンス学校を紹介されて憤慨し、ツテをたどりまくってマドリードのアモール・デ・ディオスにたどり着きます。
そこでのレッスンに仕送りの金ほぼすべてをぶっ込み、研鑽を積みます。その努力が報われ、マリア・ロサ率いるスペイン国立舞踊団のソリストに渡西から2年で大抜擢されるのです。彼女は、それまでダンスのバックグラウンドがあったようなことは書いてなかったけど、ダンス始めて2年で国立舞踊団のソリストに、ってあり得ることなのかしら?才能とほとばしる情熱は2年で人をトップダンサーにまで育てるのかしら。
ソリストになっても、公演シーズンが終われば全員解雇で無職という切ないダンサーの現実なども描かれており、衝撃でした。今もそんなことあるのしら…?不遇すぎる。
あと、ヒターノたちの説明文が端的に言って秀逸すぎる(笑)。何十年もスペインにいてダンサーとして活躍している方が言うのだから、そうなんだろうなあ。
「向上心というものが、少数の人を除いてほとんどない」。
この一文に彼女のヒターノに対する印象すべてが集約されている気がする(笑)。すごい書き出しだ。文才を感じる…。ヒターノたちは、仲間だけでつるみ、他の人たちとわかりあおうとか仲良くしようとかいう気がさらさら無いらしい。
この本の中で、岡田さんは言っちゃ悪いけど差別される理由もわかる気がする…と言っている(笑)。そのあとちゃんと「でも思いやりもあって可愛いところもある」とやや軽めの擁護も入れていますが…とにかく、我が強く大変な人たちのようです。
彼らにはとやかく言うと逆にパフォーマンスが落ちるので、遅刻されても何されても舞踊団の人たちは黙っているらしい。うーん、すごい。
ヒターノについての知識が増えた一冊でした…(笑)。
とにかく、岡田さんの文才はすごい。読みやすく、描写がうまく、そしてユーモアがあって面白い。良い本ですが、Amazonで見ると「これは古書です」と書いてある(汗)。古書って…。
ちなみに岡田さんは現在は阿佐ヶ谷にある「岡田昌己スペイン舞踊研究所」の代表を務めていらっしゃるようです。